PLCは長年にわたり工場自動化の中心として利用されてきました。
近年はAI、クラウド、ソフトPLCなど新しい技術が登場し、PLCを取り巻く環境も大きく変化しています。
ここではPLC技術者として、「将来的にこうなったら面白い」「このような進化が期待できるのではないか」と思うことをまとめてみました。
私はラダー言語そのものは今後も残ると思っています。 なぜならラダーは設備の動作を視覚的に理解しやすく、保全担当者や電気設計者にも分かりやすいからです。
しかし将来的にはラダーを直接描くのではなく、テキストやAIによって生成されたラダーを利用する時代になるかもしれません。
設計者はテキストで仕様を記述し、PLCはラダー表示に変換する。 そんな開発スタイルが普及すると、ソフトウェア開発とPLC開発の距離がさらに近くなると思います。
AI時代のPLCプログラミングとオープンソース化の展望
PLC(プログラマブルロジックコントローラ)の設計において、視覚的に直感的な「ラダー図(LD)」は長年業界のスタンダードとして定着しています。 しかし、グラフィカルな配線やブロックで構成されるラダー図は、以下のような現代のソフトウェア開発エコシステムとの親和性が低いという課題を抱えています。
今後、AI(人工知能)によるプログラミング自動生成をFA分野に導入するにあたっては、ラダー図をテキストベースで表現できる「ニモニック(IL:インストラクション・リスト)」への変換、およびその活用が極めて重要なカギとなります。
現状、PLCはメーカーごとに独自のラダー記述ルールや命令語、サフィックス(接尾辞)が存在し、これがAI学習や自動生成の大きな障壁となっています。 この解決策として、国際規格であるIEC 61131-3に準拠したラダー記述(およびニモニック表現)をベースにすることが挙げられます。 共通規格のデータが普及すれば、AIモデルが標準的なコードパターンを正確に学習し、高品質なプログラムを自動生成できる可能性が飛躍的に高まります。
テキスト言語としては「ST(構造化テキスト)言語」も存在し、複雑な数値計算やデータ処理には非常に有効です。 しかし、PLCのサイクルスキャンを跨ぐ処理(通信シーケンスやモーション制御など)においては、 タイムチャートと同期しやすいラダー図の方が依然として視覚的・構造的に優れています。 そのため、すべての制御をST言語に置き換えるのではなく、両者の強みを活かした柔軟な使い分けが現実的です。
エンジニアの生産性を落とさないための現実的なワークフローとして、以下のプロセスが提案されます。
ラダー図をテキストデータとして扱うことで、以下のような現代的ソフトウェア開発の恩恵を完全に享受できるようになります。
エンジニアが「ラダー図で描き、テキストで残す」というサイクルを回し、GitHubをはじめとするインターネット上にオープンなソースコード資産(資産モデル)が増加すれば、FA業界におけるAI自動生成の精度は劇的に向上します。
この取り組みは、属人化しがちなPLC設計ノウハウをオープンソース化し、次世代の自動化インフラを構築するための重要な一歩となるでしょう。
生成AIがもたらす設計自動化とソースコードレビューの革新
近年、IT業界を中心に生成AI(大規模言語モデル:LLM)を活用したソースコードの自動生成やバグの自動検知が急速に普及しています。 この波はFA(ファクトリーオートメーション)の現場、特にPLC(プログラマブルロジックコントローラ)のソフトウェア設計領域にも確実に押し寄せています。
これまで熟練エンジニアの経験則やノウハウに依存していたラダープログラムの設計・検証プロセスは、AIのアシストによって「より速く、より安全に」アップデートされようとしています。
AIを活用した次世代開発環境における最大の革新は、「自然言語(普段使っている言葉)」による仕様入力から直接ラダープログラム(またはニモニック)を生成できる点にあります。
エンジニアがI/O仕様と動作条件をテキストで指示するだけで、AIがその意図を正確に解釈し、論理的に破綻のない回路を瞬時に出力します。
従来の開発では、このような仕様書(タイムチャート)を元に、エンジニアが頭の中で自己保持回路やタイマ命令、インターロックの組み合わせを考えて1行ずつ入力していました。 しかし未来の開発では、AIが初期コード(ファーストドラフト)を数秒で組み上げ、エンジニアはそれを確認・微調整するだけという、圧倒的な工数削減が実現します。
AIの貢献はプログラムの「作成」にとどまりません。 人間が書いた(あるいはAIが生成した)プログラムに対する「高度なコードレビュー(静的解析)」においても、AIは極めて強力な検証パートナーとなります。
特に安全性や信頼性が厳格に求められるFA領域において、AIは以下のような致命的な設計ミスや考慮漏れを自動で検知・指摘してくれます。
開発プロセスにAIを組み込むことで、以下のような多大な恩恵を受けることができます。
「自然言語からラダーを生成し、AIがその安全性をレビューする」という未来は、決して遠い夢物語ではありません。
前述した「ラダーのテキスト(ニモニック)化によるGit管理」や「国際規格への準拠」が進み、ネット上に高品質なサンプルコード資産が蓄積されることで、このAIアシストの精度は二次関数的に向上していきます。
AIを道具として使いこなし、より付加価値の高い「システムの最適化」や「高度な制御アルゴリズムの構築」に注力することこそが、これからのFAエンジニアに求められる新時代のスタンダードとなるでしょう。
MQTT・REST APIの標準サポートが加速させる次世代の製造業IoT
近年、製造業におけるIoT(モノのインターネット)化やDXの波に伴い、工場内の設備データをクラウドへ収集・蓄積したいというニーズが急速に高まっています。
従来のように工場内(オンプレミス)のサーバーにデータを閉じるのではなく、スケーラブルなクラウド基盤へデータを集約することで、複数工場の稼働状況の一元管理や、機械学習を用いた高度なデータ分析が可能になります。 しかし、従来のPLC(プログラマブルロジックコントローラ)とITシステム(クラウド)の間には、プロトコルの違いという大きな壁が存在していました。
これまで、PLCが扱うデータは主にEtherNet/IP、PROFINET、CC-Link IEなどの「産業用イーサネット」や、Modbusなどのフィールドネットワークに最適化されていました。 これらはリアルタイム性や高信頼性には優れているものの、そのままインターネットを経由してクラウドと通信するのには向いていません。
そのため、従来はPLCとクラウドの間に、産業用PC(IPC)や専用のIoTゲートウェイ機器、あるいはOPC UAサーバーなどの「中継システム」を挟む必要がありました。 これがシステムの複雑化、初期投資(ハードウェア・開発工数)の肥大化、そしてメンテナンス負荷の上昇を招く要因となっていました。
これらの課題をブレイクスルーするのが、PLC本体がIT分野の標準プロトコルである「MQTT」や「REST API(HTTP/HTTPS)」をネイティブ(標準機能)でサポートするというアプローチです。
中継機器を一切排除し、PLCから直接クラウド(AWS、Azure、GCP等)へデータを送信できる「エッジ・ツー・クラウド」の構成が実現します。
MQTTは、軽量・低帯域で動作するパブリッシュ/サブスクライブ(Pub/Sub)型のプロトコルであり、数千〜数万点に及ぶセンサーデータやデバイス情報の周期送信に最適です。 PLCがMQTTクライアントとして機能すれば、設備の「現在位置」「電流値」「異常コード」といった変化の激しい時系列データを、最小限のネットワーク負荷でリアルタイムにクラウドへストリーミングできるようになります。
REST APIのサポートにより、PLCはWeb標準のJSON形式などで外部システムと柔軟に連携できるようになります。 例えば、「生産完了」のタイミングでクラウド側のデータベース(ERPやMES)に対して実績データをHTTP POSTで書き込んだり、逆にクラウド側から最新の「生産レシピ(パラメータ)」をHTTP GETで取得して設備に反映させたりといった、ITシステム主導のバッチ処理やオンデマンドな双方向通信が容易になります。
PLCとクラウドが直結されることで、製造現場は以下のような強力なアプリケーションを、より簡単かつ迅速に構築できるようになります。
PLCがMQTTやREST APIを「標準語」として話せるようになることは、これまで分断されていたOT(制御技術)とIT(情報技術)の世界が本当の意味で融合することを意味します。
ゲートウェイレスによる「構成のシンプル化」と「開発・導入工数の劇的な削減」は、あらゆる規模の製造業においてIoT導入のハードルを下げ、現場の知見を企業の経営資源へと直結させる強力な基盤となるでしょう。
PLCにおけるオブジェクト指向がもたらす次世代の制御設計
近年のPLC(プログラマブルロジックコントローラ)開発においては、国際規格IEC 61131-3の普及に伴い、ファンクション(FC)やファンクションブロック(FB)を用いたモジュール化、およびそれらをパッケージ化した「ライブラリ」の活用が一般化しています。 これらにより、従来のベタ書きのラダー図に比べて再利用性や見通しの良さは大幅に向上しました。
しかし、モーション制御や通信制御など、高度かつ複雑な制御を実装するにあたっては、従来のFBによる構造化だけでは管理が煩雑になるという新たな課題(限界)も見えてきています。
従来のモーション制御(例:PLCopen準拠のFB)では、1つの軸(サーボモータ)を動かすために、目的別(機能別)に独立した多数のFBを組み合わせる必要がありました。
これらのFBは、対象となる「軸(Axis変数のデータ)」に対して個別に紐付け、それぞれのインスタンスや実行条件(Executeフラグ)、ステータスをエンジニアが個別に管理しなければなりません。 そのため、軸の数が増えるにつれてプログラムのボリュームが膨大になり、バグの混入リスクやデバッグ工数の増加を招いていました。
これらの課題を根本から解決するのが、モダンなソフトウェア開発では主流となっている「クラス(オブジェクト指向)」の概念をPLCに導入するアプローチです。
クラスとは、関連する「データ(状態)」と「処理(振る舞い)」をひとまとめにして管理するための高度な設計図(仕組み)です。 PLCにおける制御対象(サーボモータや通信機器など)を、文字通り1つの独立した「オブジェクト」としてカプセル化(隠蔽)して扱うことができます。
クラスが実装可能になると、これまでのバラバラだった各FBを内部に内包した、包括的な「モーション制御クラス」を定義できるようになります。
例えば、特定のサーボモータに対してクラスのインスタンス(実体)である Servo01 を生成した場合、以下のように直感的かつスマートな記述が可能になります。
このクラスの恩恵はモーション制御にとどまりません。 例えばソケット通信やフィールドネットワークなどの「通信系」においても、接続、送信、受信、切断といった一連の処理とバッファデータを1つの「通信クラス」としてカプセル化することで、ミドルウェア(ライブラリ)の再利用性が劇的に向上することが期待されます。
PLC開発にクラスが本格導入され、エンジニアがこれらを自在に実装できるようになれば、以下のような多大な恩恵を受けることができます。
「FUN、FB、そしてライブラリ」までを使いこなせるようになったエンジニアにとって、その先にある「クラス(オブジェクト指向)」の習得と実装は、FA開発を次のステージへと引き上げるための確実なロードマップです。
現行のPLCでも一部の高級言語(ST言語や一部メーカーの拡張機能)でオブジェクト指向のエッセンスが取り入れられ始めていますが、未来のFA業界においてクラスを用いた設計が標準化されれば、産業用ソフトウェアの生産性と品質は飛躍的に向上するに違いありません。
エッジAI・画像処理・データ分析をインラインで実現する次世代制御アーキテクチャ
近年、製造業の現場では、データをクラウドに送るだけでなく、装置のすぐそば(エッジ領域)でリアルタイムに高度な処理を行う「エッジコンピューティング」への注目が高まっています。 特に、AIを用いた外観検査や異常検知、高度な統計解析をインライン(装置の動作サイクル内)で実行したいというニーズが急速に拡大しています。
しかし、これらの先端技術を支えるソフトウェア資産の多くは「Python」で開発されているのに対し、現場の制御を担うPLCはラダーやST言語で動いており、この2つの言語・環境をどう連携させるかが大きな技術的課題となっていました。
これまで、PLC制御の中でPythonの高度なアルゴリズム(画像処理やAI推論など)を利用する場合、PLCとは別に「外部PC(Windows/Linux)」や「産業用PC(IPC)」を用意するのが一般的でした。
これらの課題を打破するのが、PLCの内部(ランタイム環境)から、直接Pythonスクリプトや関数をシームレスに呼び出せる仕組みです。
中継通信を一切挟まずに、PLCの制御ループ(タクトスキャン)の中で直接Pythonの膨大なライブラリ群を「関数(ファンクション)」のように実行できる環境が期待されています。
TensorFlowやPyTorchなどのフレームワークで学習済みのAIモデル(ONNX形式など)を、PLC内のPython環境で直接ロードします。 PLCがセンサーから取得した波形データや圧力データをそのままPythonのAIモデルに引き渡し、「正常/異常」の推論結果を数ミリ秒で制御ロジックにフィードバックすることが可能になります。
高価な専用画像処理センサを使わなくても、汎用的なカメラ(USBやGigE)の映像をPLC内のPython環境に取り込み、OpenCVなどのライブラリを用いて、形状認識、色の判定、アライメント(位置合わせ)計算などを柔軟かつ安価に実装できるようになります。
NumPyやPandas、SciPyといった強力な数値計算ライブラリを利用し、設備の振動データに対して高速フーリエ変換(FFT)などの統計処理をPLC内で完結。 さらに、通信エラー発生時にPythonのRequestsライブラリを介して、社内のチャットツール(SlackやMicrosoft Teams等)へ直接アラート通知をWeb API経由で送信する、といった処理も極めてシンプルなコードで記述できます。
PLCからPythonを簡単に呼び出せるようになることで、以下のような圧倒的な開発効率と機能拡張が実現します。
「PLCからPythonを利用する」というアプローチは、決定論的なリアルタイム性が求められるシーケンス制御と、非決定論的で柔軟なデータ処理が得意な現代のソフトウェアを融合させる、最も現実的かつ強力な解法です。
すでに一部の産業用PC型コントローラや先進的なPLCにおいて、Linuxコンテナ(Docker等)やマイクロランタイムを搭載することでPythonを同居させる試みが始まっています。 この連携が標準化されれば、FAエンジニアは「ハードウェアを動かすラダー」と「データを賢く扱うPython」という最強の両輪を手に入れ、装置のインテリジェント化をこれまでにないスピードで加速させていくことになるでしょう。
信頼性の追求とオープン化がもたらす「二極進化」のロードマップ
長年、工場の自動化(FA)を支えてきたPLC(プログラマブルロジックコントローラ)は、高い信頼性と堅牢性を備えた「専用ハードウェア(専用機)」として進化を続けてきました。 しかし近年のIT技術の急速な進歩、そして製造業のDXに伴い、産業用PC(IPC)などの汎用ハードウェア上でPLCの機能を実現する「ソフトPLC(ソフトウェアPLC)」の存在感が急速に高まっています。
これにより、今後のFA業界は「すべてがソフトPLCに置き換わる」のではなく、専用機とソフトPLCがそれぞれの強みを活かして「分岐し、共存しながら進化する」という現実的な新時代を迎えています。
ソフトPLCがどれだけ普及しても、PLC専用機が完全に淘汰されることはありません。 それは、24時間365日、過酷な環境下で稼働し続ける生産設備において、専用機が持つ以下の圧倒的なアドバンテージが不可欠だからです。
超高速なモーション制御や、一瞬の停止も許されない基幹ラインのインターロック制御など、「信頼性とリアルタイム性が最優先される領域」において、専用機は今後も主役であり続けます。
一方で、ソフトPLCの最大の強みは、ハードウェアが「汎用アーキテクチャ(PC)」であるからこそ得られる「圧倒的な拡張性とIT親和性」にあります。
従来の専用機では難しかった処理を、同一ハードウェア(1台のPC)内でシームレスに同居・実行させることができます。
未来のFA設計においては、これらを対立させるのではなく、システムの要求仕様に応じて明確に使い分ける「ハイブリッド構造」が主流となります。
| 評価軸 | PLC専用機 | ソフトPLC |
|---|---|---|
| 主な用途 | 高速・高精度なリアルタイム制御、安全制御、基幹シーケンス | データ密度の高いエッジコンピューティング、AI画像解析、上位IT連携 |
| 強み | 24時間365日の安定性、耐ノイズ性、定周期性の完全保証 | 拡張性、豊富なIT言語(Python等)の利用、大容量データ処理 |
| ハードウェア | 各メーカーの専用ASIC・専用設計筐体 | 産業用PC(IPC)、汎用PC、組込みCPUボード |
例えば、現場の装置単体の超高速な制御は「専用機」に任せ、複数の装置からデータを集約してデータ解析や上位システムとのゲートウェイを担うセルコントローラ層には「ソフトPLC」を採用する、といった階層型のアーキテクチャが最も現実的かつ強力な解となります。
PLC専用機は、そのアイデンティティである「信頼性とリアルタイム性」をどこまでも愚直に深掘りする方向へ進化(深化)していきます。 一方で、ソフトPLCはITの最新トレンド(AI、データベース、Web技術)を網羅的に取り込みながら、制御の可能性を外へ広げる方向へ進化していきます。
これまで考察してきた「テキスト化」「クラス化」「AI支援」「クラウド連携」「Python利用」という未来のFA開発の形は、この「進化を続ける専用機」と「柔軟なソフトPLC」という強固な二極のインフラの上でこそ、真の価値を発揮することになるでしょう。
HTML5とJavaScriptがもたらす画面設計のオープン化と自由度の変革
工場内の設備やラインの状況を可視化・操作する「HMI(タッチパネル表示器)」の開発において、現在は各コントロール機器メーカーが提供する独自の画面作成(作画)ツールを使用するのが一般的です。
しかし、これらの専用ツールを用いたページ単位の作画手法は、現代のUI/UX(ユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンス)の進化スピードや、エンジニアの効率的な開発環境において、以下のような無視できない限界を迎えています。
これらの課題に対するブレイクスルーが、表示器の画面を「HTML(HyperText Markup Language)」および「JavaScript」というWeb標準技術で構築し、表示器本体はそれらをレンダリングする「ブラウザ」として機能させるというアプローチです。
専用作画ツールを必要とせず、一般的なWeb開発と同じエコシステムを表示器の世界に持ち込みます。
従来の「ページをボタンで切り替える」固定的な画面構成から、現代のスマートフォンやWebサイトのような「縦長スクロール(スワイプ)型」のレイアウトへ移行します。 これにより、1つの画面(ページ)の中に、関連するモーターのパラメータ、トレンドグラフ、アラート履歴などをシームレスに配置でき、直感的で視認性の高い操作環境(直感的なUI)を実現できます。
表示器上でJavaScript(JS)が動作すれば、PLCから取得した生データをリアルタイムにグラフ化(Chart.jsなどの強力なオープンソースライブラリの活用)したり、複雑なアニメーション、ローカルでのデータ一時キャッシュ、非同期での外部Web API連携(サーバーからのレシピデータ取得など)が自由自在になります。
すべてのFAエンジニアがテキスト(コード)でHTML/CSS/JSをゼロから書き起こすのはハードルが高いため、過渡期においては、直感的なドラッグ&ドロップでWeb標準のHTMLを出力できる「Webベースの画面作成ツール」をメーカーやコミュニティが提供することが現実的な解となります。 出力される中身がオープンなHTMLであるため、後からのカスタマイズやGitでのコード管理も容易です。
画面設計をWeb技術に統一することで、開発者とエンドユーザーの双方に多大な恩恵がもたらされます。
これまで考察してきた「PLCプログラムのテキスト化(ニモニック・クラス化)」や「ソフトPLCの台頭」により、コントローラ側のオープン化(IT融合)は着実に進んでいます。 これと歩調を合わせるように、表示器(HMI)側もWeb標準技術へとシフトすることは、FAシステム全体のアーキテクチャとして必然の流れです。
すでに一部の先進的なメーカーでは、Webサーバー機能を内蔵したPLCや、HTML5ランタイムを搭載したWeb型HMI(産業用Webパネル)を市場に投入し始めています。 専用ツールという「枠」を取り払い、HTML/JavaScriptという「自由な翼」を手に入れることで、FAの画面設計はより美しく、より高機能に、そして何よりも「エンジニアにとって楽しい開発環境」へと進化を遂げるに違いありません。
表示器のページの編集は各メーカーのツールで作成するのが一般的です これをページ単位で作画するのではなくてサイトのページのように縦長のページをHTMLで作成して表示器でスワイプしたり出来れば汎用的になって技術資料もネットで簡単に探せることが期待できます メーカー依存のツールを使わなくても、HTMLで作成して、表示器はブラウザで表示するようにできればもっと自由度が広がります さらにJavaScriptなども使えるようになれば、さらによくなりそうです HTML作成のハードルが高いようであればHTML作成ツールを提供するなどすればよさそうです
IT技術の融合がもたらす次世代FA開発のグランドデザイン
製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)やスマートファクトリー化が叫ばれる中、産業用ソフトウェアの開発現場は今、劇的な転換期を迎えています。
これまで日本のFA業界を支えてきたのは、ハードウェアと一体となったクローズド(メーカー独自仕様)な技術、そして熟練エンジニアの高度な「職人技」でした。
しかし、激変する市場ニーズへの迅速な対応、深刻化するエンジニア不足、そして急激に進化するIT技術(AI・クラウド)を取り込むためには、従来の「メーカー固有の専用環境に依存した開発スタイル」からの脱却が不可欠です。
本ページで考察してきた7つの変革テーマは、まさに「FA開発のオープン化(ITとの融合)」という一本の強力な軸で結ばれています。
これまでの議論を「言語・設計アプローチ」「エッジ・インフラの高度化」「HMI(インターフェース)」という3つのレイヤーに整理すると、次世代のFAアーキテクチャがより鮮明に見えてきます。
グラフィカルなラダー図から国際規格(IEC 61131-3)に準拠した「ニモニック(テキスト)」への変換は、FAの世界にGitによるバージョン管理や差分比較、SNSでのナレッジ共有といった、近代的なソフトウェア開発の恩恵をもたらす第一歩です。
さらに、ファンクションブロック(FB)の先にある「クラス(オブジェクト指向)」の実装により、複雑な制御対象(サーボ軸や通信)をデータと処理が一体となったオブジェクトとして美しくカプセル化できるようになります。
これらの「テキスト化」と「構造化」の資産がWeb上に蓄積されることで、はじめて「生成AIによるラダーの自動生成や安全なコードレビュー」という未来の強力な開発アシスト環境が現実のものとなります。
コントローラ(PLC)側では、ITの世界の標準語である「MQTTやREST API」の標準サポートにより、ゲートウェイレスで直接クラウドへデータをストリーミングし、予知保全や生産分析を可能にするインフラが整いつつあります。
また、データサイエンスの覇者である「Python」の直接呼び出しが実現すれば、外部PCを介することなく、超低遅延でエッジAI推論やOpenCVによる画像処理をインラインで実行可能です。
これら膨大なIT機能(AI・データベース・Webサーバー)を丸ごと1台の筐体で飲み込む「ソフトPLC」の進化と、圧倒的な信頼性を担保し続ける「PLC専用機」。 この両者が適材適所で「二極進化」することこそが、今後の現実的かつ強固なエッジインフラの姿です。
そして、この高度化したシステムと人間(オペレーター・エンジニア)を繋ぐ最後のピースが、HMI(表示器)のWeb標準(HTML5/JavaScript)化です。
メーカー独自の作画ツールというベンダーロックインから解放され、世界中で開拓されている膨大なWeb技術の資産(テンプレート、ライブラリ、検索可能なナレッジ)をそのまま画面設計に活用できるようになります。 スマホのような滑らかなスワイプ操作や、マルチデバイス(タブレットやPCブラウザ)への柔軟な展開は、現場のUXを劇的に向上させます。
これらの技術革新がもたらす最大の価値は、「エンジニアを非生産的な作業から解放し、本質的な付加価値の創造へシフトさせること」にあります。
従来の開発では、メーカーごとに異なる仕様の確認、泥臭い通信ハンドシェイクの実装、専用ツールでの画面の力技による作画など、マニュアルの解読や定型作業に多くの工数が割かれていました。
しかし、AIが初期コードを生成し、標準化されたクラスやPythonのライブラリを組み合わせ、HTMLで柔軟に画面を構築できるようになれば、開発工数は劇的に削減されます。 エンジニアは、より上位の「装置全体の最適なアーキテクチャ設計」や「高度な制御アルゴリズムのブラッシュアップ」、そして「現場の知見をデータに変えるビジネスモデルの構築」といった、真にクリエイティブな業務に集中できるようになります。
「ラダーで描き、テキストで残す」「信頼性の専用機と、柔軟なソフトPLCを使い分ける」「画面はWeb標準で世界と繋ぐ」。
本ページで描き出した未来は、決して手の届かない夢物語ではありません。すでに一部の先進的な現場やコントローラでは、これらの融合が確実に始まっています。
OT(制御技術)のエンジニアがITの翼を手に入れ、ITのエンジニアがFAのリアルタイムな現場の価値を理解したとき、日本のものづくりは真の意味で次のステージへと進化を遂げるでしょう。
新時代のFA開発のスタンダードを自らの手で形作っていくこと。
それこそが、これからのFAエンジニアリングの最大の挑戦であり、醍醐味なのです。