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ラズベリーパイとは

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ラズベリーパイ(Raspberry Pi、通称ラズパイ)は、イギリスのRaspberry Pi財団と、その子会社であるRaspberry Pi Ltd.が開発している手のひらサイズのシングルボードコンピュータです。
もともとは子どもたちがプログラミングを学ぶための安価なコンピュータとして2012年に誕生しましたが、現在では教育やホビーだけでなく、デジタルサイネージや産業機器の組込み、工場のデータ収集など、FAの現場でも広く使われています。

このページでは、ラズベリーパイの歴史、現在入手可能な機種とスペック、どんな用途で使われているかを紹介し、最後にPLCと接続したデータ収集・表示や、PC・クラウドと連携するシステム構成を提案します。

ラズベリーパイ誕生の背景と歴史

誕生の背景

2006年ごろ、ケンブリッジ大学のコンピュータ研究所にいたエベン・アプトン(Eben Upton)らは、コンピュータサイエンス学科を志望する学生のプログラミング経験が年々少なくなっていることに危機感を持っていました。
1980年代の子どもたちは、BBC Microなどの家庭用コンピュータで自然にプログラミングに触れていましたが、パソコンやゲーム機が高価で「壊してはいけないもの」になったことで、気軽にいじれる環境が失われていたのです。

そこで「子どもが自由に触れて、壊しても惜しくない値段のコンピュータ」を目指して2009年にRaspberry Pi財団が設立され、2012年2月29日に最初の製品「Raspberry Pi Model B」が35ドルで発売されました。
発売直後から注文が殺到し、教育用途だけでなく世界中のエンジニアやメイカーが電子工作・サーバ・組込み機器に使い始めたことで、現在のような幅広い用途に広がっていきました。

ラズベリーパイ年表

年月出来事ポイント
2006年ケンブリッジ大学でエベン・アプトンらが構想安価な教育用コンピュータを目指す
2009年Raspberry Pi財団 設立英国の慈善団体(教育目的)
2012年2月Raspberry Pi Model B 発売ARM11 700MHz・35ドル。初代モデル
2014年Compute Module 1、Model B+ 発売組込み向けモジュール登場。B+で現在まで続く40ピンGPIOを採用
2015年Raspberry Pi 2、Raspberry Pi Zero 発売クアッドコア化。Zeroは5ドルの超小型モデル
2016年2月Raspberry Pi 3 Model B 発売64bit CPU、Wi-Fi/Bluetoothを標準搭載
2018年Raspberry Pi 3 Model B+/A+ 発売1.4GHz化、デュアルバンドWi-Fi
2019年6月Raspberry Pi 4 Model B 発売USB3.0、ギガビットEthernet、デュアル4K出力。PC並みの用途が可能に
2020年OS名称を Raspberry Pi OS に変更、Compute Module 4、Raspberry Pi 400 発売産業用途向けCM4が普及。キーボード一体型PCが登場
2021年Raspberry Pi Pico、Zero 2 W 発売自社設計マイコンチップRP2040でマイコン市場へ参入
2021~2023年世界的な半導体不足産業顧客を優先した供給となり、一般向けは入手困難に
2023年秋Raspberry Pi 5 発売自社設計I/OチップRP1、PCIeインターフェースを搭載
2024年ロンドン証券取引所に上場、Pico 2、Compute Module 5、Raspberry Pi 500 発売RP2350はArm/RISC-Vの両コアを搭載
2025年Pi 5 16GB版、Raspberry Pi 500+、Pi 5 1GB版 発売この年、RP2040/RP2350チップの出荷数がボード+モジュールの合計を上回る
2026年メモリ価格高騰による値上げ(2月・4月・10月)、Pi 4 3GB版 発売必要なメモリ容量だけを選べるようラインナップを拡充
2028年以降Raspberry Pi 6(予定)CEOは「早くても2028年初頭」と発言。Pi 5 が当面のフラッグシップ

2012年~2015年 教育用コンピュータとしての誕生

初代モデルは性能こそ控えめでしたが、LinuxとPythonが動き、GPIOでLEDやセンサを直接制御できる点が支持されました。2014年には基板をモジュール化した「Compute Module」が登場し、量産製品へ組込む道が開かれました。

2016年~2019年 IoT時代の主役へ

Raspberry Pi 3でWi-Fi/Bluetoothが標準搭載となり、センサデータをネットワークへ送るIoTデバイスとして一気に普及しました。Raspberry Pi 4ではUSB3.0やギガビットEthernetを備え、ファイルサーバや軽量なデスクトップPCとしても実用的な性能になりました。

2020年代 産業用途とマイコンへの拡大

Compute Module 4/5は産業機器メーカーの製品に組み込まれ、空港の発着案内表示やシンクライアント端末などにも採用されています。また自社設計のマイコンチップRP2040/RP2350によって、Linuxが動くコンピュータだけでなくマイコン分野でも大きな存在になりました。

現在入手可能な機種とスペック

2026年10月時点で公式に販売されている主な機種を4つのカテゴリに分けて紹介します。ラズベリーパイは長期供給を重視しており、古い世代の機種も現在まで継続して生産されています。

カテゴリ主な機種特徴
シングルボードPi 5 / Pi 4 / Pi 3 / Zeroいわゆる「ラズパイ」。Linuxが動く汎用コンピュータ
キーボード一体型Pi 500+ / Pi 500 / Pi 400キーボードに本体を内蔵。モニタをつなぐだけでPCとして使える
Compute ModuleCM5 / CM4 / CM4S / CM3+基板に組込むためのモジュール。産業機器・量産品向け
マイコンボードPico 2 / Pico 2 W / Pico / Pico WOSなしで動くマイコン。低消費電力・リアルタイム処理向け

シングルボードコンピュータ

項目 Raspberry Pi 5 Raspberry Pi 4 Model B Raspberry Pi 3 Model B+ Raspberry Pi 3 Model A+ Raspberry Pi Zero 2 W Raspberry Pi Zero W
発売2023年2019年2018年2018年2021年2017年
SoCBCM2712BCM2711BCM2837B0BCM2837B0RP3A0(BCM2710A1)BCM2835
CPUCortex-A76 ×4
2.4GHz
Cortex-A72 ×4
1.5GHz(新しいリビジョンは1.8GHz)
Cortex-A53 ×4
1.4GHz
Cortex-A53 ×4
1.4GHz
Cortex-A53 ×4
1GHz
ARM1176JZF-S ×1
1GHz
メモリ1 / 2 / 4 / 8 / 16GB
LPDDR4X
1 / 2 / 3 / 4 / 8GB
LPDDR4
1GB
LPDDR2
512MB
LPDDR2
512MB
LPDDR2
512MB
LPDDR2
有線LANギガビット
(PoE+はHATで対応)
ギガビット
(PoEはHATで対応)
ギガビット(USB2.0経由のため最大約300Mbps)なしなしなし
無線Wi-Fi 5(2.4/5GHz)
Bluetooth 5.0 / BLE
Wi-Fi 5(2.4/5GHz)
Bluetooth 5.0 / BLE
2.4/5GHz Wi-Fi
Bluetooth 4.2 / BLE
2.4/5GHz Wi-Fi
Bluetooth 4.2 / BLE
2.4GHz Wi-Fi
Bluetooth 4.2 / BLE
2.4GHz Wi-Fi
Bluetooth 4.1 / BLE
USBUSB3.0 ×2
USB2.0 ×2
USB3.0 ×2
USB2.0 ×2
USB2.0 ×4USB2.0 ×1micro USB(OTG)×1micro USB(OTG)×1
映像出力micro HDMI ×2
(4Kp60 ×2)
micro HDMI ×2
(4Kp60 ×1 / 4Kp30 ×2)
HDMI ×1HDMI ×1mini HDMI ×1mini HDMI ×1
拡張PCIe 2.0 x1(M.2 SSD等をHATで接続)
MIPI カメラ/ディスプレイ ×2
MIPI CSI ×1
MIPI DSI ×1
MIPI CSI ×1
MIPI DSI ×1
MIPI CSI ×1
MIPI DSI ×1
MIPI CSI ×1MIPI CSI ×1
その他RTC(要電池)、電源ボタン、自社I/OチップRP1     
GPIOいずれも40ピンGPIOヘッダ(Zero系はピンヘッダ未実装の基板あり)
電源USB-C 5V/5A推奨USB-C 5V/3Amicro USB 5V/2.5Amicro USB 5V/2.5Amicro USB 5V/2.5Amicro USB 5V/1.2A
向いている用途データ収集サーバ、Web表示、画像処理、AIデータ収集、ゲートウェイ、サイネージ軽量なゲートウェイ、既存設備の置き換え小型の表示・制御センサ端末、小型IoT機器単機能のセンサ端末

キーボード一体型

※ Raspberry Pi 500+ は外観がPi 500とほぼ同じ(キーボードがメカニカル)のため、写真はPi 500のみ掲載しています。

項目Raspberry Pi 500+Raspberry Pi 500Raspberry Pi 400
発売2025年2024年2020年
中身Pi 5 相当(Cortex-A76 ×4 2.4GHz)Pi 5 相当(Cortex-A76 ×4 2.4GHz)Pi 4 相当(Cortex-A72 ×4 1.8GHz)
メモリ16GB8GB4GB
ストレージ256GB NVMe SSD 内蔵microSDmicroSD
キーボードメカニカル(RGBバックライト)メンブレンメンブレン
用途開発用デスクトップ学習用・事務用PC学習用PC

キーボード一体型はGPIOも背面に出ているため、開発用PCとして使いながら電子工作も行えます。現場の端末として使う場合は、シングルボード型をケースに入れる方が設置しやすいでしょう。

Compute Module(組込み用モジュール)

項目Compute Module 5Compute Module 4Compute Module 4SCompute Module 3+
発売2024年2020年2022年2019年
中身Pi 5 相当(BCM2712)Pi 4 相当(BCM2711)Pi 4 相当(BCM2711)Pi 3B+ 相当(BCM2837B0)
メモリ2 / 4 / 8 / 16GB1 / 2 / 4 / 8GB1 / 2 / 4 / 8GB1GB
eMMCなし / 16 / 32 / 64GBなし / 8 / 16 / 32GBなし / 8 / 16 / 32GBなし / 8 / 16 / 32GB
形状基板対基板コネクタ(CM4とほぼ互換)基板対基板コネクタSODIMM(CM3互換)SODIMM

Compute Moduleは単体では使えず、I/Oやコネクタを載せたキャリアボードに装着して使います。市販の産業用コントローラやHMIの中にも、Compute Moduleを搭載した製品が多くあります。eMMCを搭載したモデルを選べばmicroSDカードを使わずに済むため、振動や書込み寿命が気になる現場でも安心です。

マイコンボード(Pico シリーズ)

項目Pico 2 WPico 2Pico WPico
発売2024年2024年2022年2021年
チップRP2350(Cortex-M33 ×2 または Hazard3 RISC-V ×2 を選択、150MHz)RP2040(Cortex-M0+ ×2、133MHz)
SRAM / Flash520KB / 4MB264KB / 2MB
無線Wi-Fi 4 / Bluetooth 5.2なしWi-Fi 4 / Bluetooth 5.2なし
開発言語C/C++(Pico SDK)、MicroPython、CircuitPython など

PicoはLinuxが動くコンピュータではなく、Arduinoのようなマイコンボードです。OSの起動待ちがなく電源を入れてすぐ動くため、センサの読取りやパルス計測など、リアルタイム性が必要な部分をPicoに任せ、集計や通信をPi 5で行うといった組み合わせも有効です。

価格について

2025年末から、AIデータセンター向け需要によるメモリ(LPDDR4)価格の高騰を受けて、メモリ容量の大きいモデルを中心に段階的な値上げが行われています。2026年10月時点の公式希望小売価格(米ドル)は次のとおりです。

機種1GB2GB3GB4GB8GB16GB
Raspberry Pi 5$45$77.50-$110$175$305
Raspberry Pi 4$35$67.50$83.75約$100約$165-
・旧世代のLPDDR2メモリを使うZeroシリーズ、Pi 3シリーズ、Raspberry Pi 400($60)は値上げの対象外です。
・Zero 2 W は需要の集中で品薄が続いていましたが、メーカーは2026年後半に供給が回復する見込みとしています。
・国内の販売価格は為替や販売店によって異なります。購入時は国内の正規販売店で確認してください。
・メーカーはメモリ価格が落ち着いたら値下げすると表明しています。必要以上のメモリを積んだモデルを選ばないことが、コストを抑えるポイントです。

長期供給

ラズベリーパイは長期供給を明言しており、Raspberry Pi 4は少なくとも2034年1月まで、Raspberry Pi 5とCompute Module 5は少なくとも2036年1月まで生産が継続される予定です。設備に組み込んで10年以上使うことを考える場合、この長期供給の方針は大きな安心材料になります。

どれを買えばいい? 目的別おすすめ

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ラズベリーパイを購入する

このページで紹介した用途に合わせて選ぶなら、次の機種がおすすめです。技適マーク付きの国内正規品を選んでください(並行輸入品は国内で無線を使えない場合があります)。

Raspberry Pi 5(4GB) PLCデータ収集の定番 構成1・2の収集サーバ+Web表示に。迷ったらこれ。数十台規模なら8GBも検討。 Amazonで探す
Raspberry Pi 5(8GB) 多台数・画像処理 PLC数十台の集約、Grafanaや画像処理を同時に動かす場合に。 Amazonで探す
Raspberry Pi 4 Model B コスト重視 既存設備の置き換えや軽めのゲートウェイに。2GB/4GBで十分なケースが多いです。 Amazonで探す
Raspberry Pi Zero 2 W 小型センサ端末 1台の設備の状態をWi-Fiで送るだけ、といった小さな用途に。 Amazonで探す
Raspberry Pi Pico 2 W マイコン パルス計測やセンサ読取りなどリアルタイム処理を担当させる場合に。 Amazonで探す
スターターキット 初めての方に 本体・電源・ケース・microSDがまとめてそろうので、届いたその日に始められます。 Amazonで探す

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どんなことに使われているのか

教育・プログラミング学習

本来の目的である教育分野では、学校のプログラミング授業や、Pythonを使った電子工作の教材として世界中で使われています。OSの入ったmicroSDカードを差し替えるだけで環境を初期化できるため、「壊しても大丈夫」な学習環境として最適です。

ホビー・家庭内サーバ

ファイルサーバ、メディアサーバ、ホームオートメーション(Home Assistantなど)、ネットワーク内の広告ブロック、レトロゲーム機など、24時間動かしても電気代が少ない小型サーバとして人気があります。

産業・組込み用途

  • デジタルサイネージ(店舗・駅・空港の案内表示)
  • シンクライアント端末、キオスク端末
  • 産業用コントローラやHMIの中身(Compute Module搭載製品)
  • カメラとAIアクセラレータ(AI HAT+)を使った画像検査・物体検出
  • IoTゲートウェイ(現場の機器とクラウドの中継)

FA(ファクトリーオートメーション)分野

工場では、制御そのものはPLCが担い、ラズベリーパイはPLCの「横」に置いてデータを集める・見せる・つなぐ役割で使われることが多くなっています。

  • PLCから稼働状態や生産数を収集してデータベースに記録
  • 現場のモニタやタブレットに稼働状況・グラフを表示
  • 古い設備(シリアル通信しかないPLCなど)をネットワークにつなぐ変換器
  • 工場内のデータをPCや上位システム、クラウドへ送るゲートウェイ

PLCの更新や大掛かりなSCADA導入に比べて、小さく始められ、うまくいったら台数を増やせる点が大きなメリットです。次の章では、この使い方を具体的に紹介します。

PLCと接続してデータ収集・表示

PLCとラズベリーパイの役割分担

 PLCラズベリーパイ
得意なこと確実で高速なシーケンス制御、I/O制御、モーションデータの保存・加工・表示、ネットワーク通信、Webやクラウドとの連携
苦手なこと大量データの保存、グラフ表示、IT系システムとの連携リアルタイム制御、ノイズ・温度などの厳しい環境、安全に関わる制御
このページでの役割設備の制御(今まで通り)PLCからデータを読み出して、記録・表示・転送

ポイントは、ラズベリーパイに制御はさせないことです。PLCの既存プログラムには手を入れず(または読出し用のデータをまとめる程度にして)、ラズベリーパイはPLCのメモリを外から読みに行くだけにすれば、設備の動作に影響を与えずにデータ収集を始められます。

基本構成

PLC OMRON KEYENCE MITSUBISHI Ethernet FINS / 上位リンク MC / CIP Raspberry Pi 収集プログラムPython(定周期で読出し) データベースSQLite / MySQL WebサーバFastAPI / Flask HTTP ブラウザ PC・タブレット・スマホ
PLCのデータをラズベリーパイで収集し、ブラウザで表示する基本構成

ラズベリーパイ1台で「収集」「保存」「表示」まで完結するため、PCを常時稼働させる必要がありません。表示側は専用ソフト不要で、同じネットワーク上のPCやタブレットのブラウザから見ることができます。

接続方式

主要メーカーのPLCは、EthernetでPLCのメモリを読み書きする通信プロトコルを持っています。Pythonのライブラリを使えば、ラズベリーパイから簡単にアクセスできます。

プロトコル対象PLCPythonライブラリの例PLC側の設定解説ページ
FINSOMRON CS/CJ、NJ/NXfinscommandFINS/UDPの有効化、ノード番号OMRON FINS通信
上位リンクKEYENCE KVkvhostlink-udp上位リンクのポート番号KEYENCE 上位リンク通信
MCプロトコル(SLMP)MITSUBISHI Q / L / iQ-R / iQ-Fmcprotocol-udpMCプロトコルのオープン設定MITSUBISHI MCプロトコル通信
CIP(EtherNet/IP)OMRON NJ/NX、KEYENCE KV、Rockwell などpycomm3、libplctag(C)などタグ(変数)の公開設定CipObject
OPC UAOMRON NX、KEYENCE KV-X、iQ-R(ユニット)などasyncuaOPC UAサーバ機能の有効化OPC UA
Modbus/TCP多くのPLC・計測器・インバータpymodbusModbusサーバ機能の有効化Modbus
メーカーが混在する現場でも、プロトコルごとに読出し部分を「アダプタ」として分けておけば、上位の保存・表示処理は共通化できます。将来OPC UAに移行する場合も、アダプタを追加するだけで済みます。

サンプル:KVシリーズのデータをSQLiteに記録する

KEYENCE KVシリーズの DM0~DM3 を1秒ごとに読み出して、ラズベリーパイ上のSQLiteデータベースに記録する最小構成のサンプルです。

import sqlite3
import time
import datetime
from kvhostlink import kvHostLink      # pip install kvhostlink-udp

PLC_IP   = '192.168.250.10'
INTERVAL = 1.0                         # 収集周期 [秒]

db = sqlite3.connect('plc_log.db')
db.execute('''CREATE TABLE IF NOT EXISTS log(
                ts  TEXT,
                dm0 INTEGER, dm1 INTEGER, dm2 INTEGER, dm3 INTEGER)''')

kv = kvHostLink(PLC_IP)

while True:
    try:
        rcv = kv.reads('DM0.U', 4)     # 例: b'00002 00001 00002 00003\r\n'
        values = [int(v) for v in rcv.decode().split()]
        ts = datetime.datetime.now().isoformat(timespec='seconds')
        db.execute('INSERT INTO log VALUES (?,?,?,?,?)', [ts] + values)
        db.commit()
    except Exception as e:
        print('通信エラー:', e)        # 通信が切れても収集を止めない
    time.sleep(INTERVAL)

OMRON(FINS)や三菱(MCプロトコル)の場合も、読出し部分を各ライブラリの関数に置き換えるだけで同じように記録できます。実運用では、systemdに登録してラズベリーパイの起動時に自動で動くようにしておきます。

データの表示方法

方法特徴向いているケース
自作Webページ
(FastAPI / Flask + Plotly / Chart.js)
画面を自由に作れる。ガントチャートや帳票など現場に合わせた表示が可能稼働状況一覧、設備ごとのタイムチャート
Grafanaデータベースをつなぐだけでダッシュボードが作れるトレンドグラフ、温度・電流などの監視
Node-REDブロックをつなぐだけで通信処理と簡易ダッシュボードが作れる試作、プログラムを書かずに素早く確認したいとき
ラズパイ直結モニタラズベリーパイにモニタをつなぎ、ブラウザを全画面(キオスク)表示現場の大型モニタ、アンドン表示

PCやクラウドとの連携 構成の提案

規模や目的に合わせて、次の4つの構成から始めることをおすすめします。構成1から始めて、必要に応じて構成2~4へ広げていくことができます。

構成1スタンドアロン ― まずは1設備から

PLC1台 定周期読出し Raspberry Pi収集 + SQLite+ Web表示 HDMI / LAN 現場モニタタブレット

PLC1台とラズベリーパイ1台で、収集・保存・表示までを完結させる構成です。費用が小さく、既存のネットワークに手を加えずに試せるので、効果を確かめるPoCに最適です。

  • 推奨機種:Raspberry Pi 4(2GB~)または Pi 5(2GB~)
  • 例:設備の稼働/停止/異常の時間を記録して、稼働率を表示

構成2多台数集約 ― ライン・工場全体の見える化

PLC #1 PLC #2 ⋮ PLC #N Raspberry Pi 5 PLCごとの収集スレッド↓ キュー書込みスレッド通信断・DB断の自動復旧 MySQLMariaDB Web画面稼働一覧ガントチャート

1台のラズベリーパイで数十台のPLCから状態を集め、データベースに記録する構成です。PLCごとに収集スレッドを分け、データベースへの書込みは1つのスレッドにまとめると、1台の通信が遅れても他の設備の収集に影響しません。

  • 推奨機種:Raspberry Pi 5(4GB~)、ストレージはSSD推奨
  • 状態(運転/停止/待機/異常)は「変化したときだけ」開始・終了時刻を記録すると、データ量が少なくガントチャート表示もしやすくなります
  • 通信が切れた区間は記録を閉じて空白にしておくと、「データなし」と「停止」を区別できます

構成3PC連携 ― ラズパイをエッジゲートウェイに

PLC制御ネットワーク Raspberry Pi 収集・前処理(集計/変換)REST API / OPC UAサーバDB / CSV共有 情報ネットワーク 事務所PC・サーバ C#アプリ / Excel / BIツールSQL Server / 生産管理MES

ラズベリーパイが制御ネットワークと情報ネットワークの間に入り、PLCのデータを使いやすい形に整えてPC側へ渡す構成です。PCからPLCへ直接アクセスしないので、PLCへの通信負荷やネットワーク設定の変更を最小限にできます。

  • 渡し方の例:REST API(JSON)、OPC UAサーバ、データベース、共有フォルダへのCSV出力
  • USB-Ethernetアダプタを追加して2ポートにすれば、制御側と情報側のネットワークを物理的に分けられます
  • PC側は既存のC#アプリやExcelから、使い慣れた方法でデータを取り込めます

構成4クラウド連携 ― 複数拠点の遠隔監視・分析

PLC(工場A) PLC(工場B) Raspberry Pi収集+ローカルバッファ Raspberry Pi収集+ローカルバッファ MQTT over TLS クラウドIoTサービス / 時系列DB ダッシュボードアラート通知AI分析

各拠点のラズベリーパイから、MQTTなどの軽量なプロトコルでクラウドへデータを送る構成です。工場の外からでもスマートフォンで稼働状況を確認でき、複数拠点のデータをまとめて分析できます。

  • 送信先の例:AWS IoT Core、Azure IoT Hub、MQTTブローカ + 時系列データベース(InfluxDBなど)
  • ラズベリーパイからの外向き通信だけで済むため、工場側に受信用のポートを開ける必要がありません
  • インターネットが切れている間はラズベリーパイ内に保存し、復旧後にまとめて送る(ストア&フォワード)と欠損を防げます
  • リモート保守にはRaspberry Pi Connectや VPN を利用できます(社内のセキュリティ規程に従ってください)
import json
import paho.mqtt.client as mqtt       # pip install paho-mqtt

client = mqtt.Client(mqtt.CallbackAPIVersion.VERSION2)
client.tls_set()                      # クラウド接続時は必ずTLSで暗号化
client.connect('broker.example.com', 8883)
client.loop_start()

payload = {'ts': ts, 'line': 'L1', 'plc': 'KV-8000', 'dm': values}
client.publish('factory/line1/plc1', json.dumps(payload), qos=1)

構成の選び方

構成規模初期費用主な目的難易度
構成1 スタンドアロンPLC 1~数台小効果の確認(PoC)、現場モニタ★
構成2 多台数集約PLC 数十台小~中ライン・工場全体の稼働監視★★
構成3 PC連携既存システムあり中生産管理・帳票・既存アプリとの連携★★
構成4 クラウド連携複数拠点中~大(月額費用あり)遠隔監視、拠点間比較、AI分析★★★
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構成1をはじめるために必要なもの

PLC 1台のデータ収集・表示を試すのに必要なものの一覧です。不要なものは省いてください。

  • Raspberry Pi 5(4GB)収集・保存・Web表示をこれ1台でAmazon
  • 公式 27W USB-C 電源Pi 5は5V/5A推奨。電源不足は不安定動作の原因にAmazon
  • アクティブクーラー制御盤内など温度が上がる環境での熱対策Amazon
  • M.2 HAT+ + NVMe SSDmicroSDの書込み寿命対策。DBを置くならおすすめAmazon
  • microSDカード(OS用)SSDを使う場合もセットアップ用に1枚あると便利Amazon
  • ケースほこり・接触対策。放熱を考えてファン付きかアルミ製をAmazon
  • RTC用バッテリーネットにつながらない現場でも時刻を保持(記録の時刻ずれ防止)Amazon
  • USB-LANアダプタ(ギガビット)制御側と情報側のネットワークを分ける場合(構成3)Amazon
  • UPS HAT停電時に安全にシャットダウンしてデータ破損を防ぐAmazon

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産業用途で使う際の注意点

ストレージ(microSDカード)

microSDカードは書込み回数に限りがあり、頻繁にデータベースへ書き込むと寿命が短くなります。Pi 5ではPCIe接続のM.2 SSD、Pi 4ではUSB接続のSSDを使うか、eMMC搭載のCompute Moduleを選ぶと安心です。OS部分を読取り専用(オーバーレイファイルシステム)にする方法も有効です。

電源

突然の電源断はファイルシステムの破損につながります。UPS機能付きのHATや、制御盤のUPSから給電し、停電時に安全にシャットダウンできるようにしておきましょう。Pi 5は5V/5Aの電源が推奨です。

設置環境

一般向けのラズベリーパイ(Pi 5)の動作温度は0~50℃です。制御盤内に設置する場合は、放熱ケースやファンで温度を管理し、ノイズ源から離して配置してください。厳しい環境では、Compute Moduleを使った産業用コントローラ製品(耐環境性やDINレール取付けに対応したもの)の利用を検討します。

ネットワークとセキュリティ

  • 制御ネットワークと情報ネットワークはできるだけ分離し、ラズベリーパイからPLCへは「読出しのみ」にする
  • 初期ユーザーやパスワードのままにせず、SSHは鍵認証にする
  • OSやライブラリは定期的にアップデートする
  • PLC側も、外部からの書込みを禁止する設定がある場合は活用する

無線機能(技適)

日本国内でWi-FiやBluetoothを使う場合は、技術基準適合証明(技適)を取得している機種・ロットであることを確認してください。国内の正規販売店で購入したものであれば通常は問題ありません。

制御には使わない

非常停止や安全に関わる制御、高速なI/O制御はPLCに任せ、ラズベリーパイは情報処理側に徹するのが基本です。ラズベリーパイが停止しても設備は今まで通り動き続ける、という構成にしておくことが重要です。

総括

ラズベリーパイは、教育用の35ドルコンピュータとして生まれ、現在では産業機器にも組み込まれる信頼性の高いプラットフォームに成長しました。

FAの現場では、PLCの制御には手を加えずに、データを集める・見せる・つなぐ役割をラズベリーパイに任せることで、小さな投資で設備の見える化を始められます。

シングルボード : データ収集サーバ、ゲートウェイ、Web表示に。まずはPi 4/Pi 5から。
Compute Module : 量産品や制御盤に組み込む場合に。eMMCで長期運用に強い。
Pico : リアルタイム性が必要なセンサ読取りや、小型・低消費電力の端末に。

まずは構成1で1台の設備から試し、効果が見えたら構成2~4へ広げていく進め方がおすすめです。

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ラズベリーパイのセットアップ方法を紹介します

出典

価格・供給状況は変動します。最新の情報は公式サイトおよび国内正規販売店で確認してください。

画像のクレジット

機種の画像はWikimedia Commonsで公開されているものを、各ライセンスに従って使用しています。

Raspberry Pi is a trademark of Raspberry Pi Ltd.

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